ヤンジャンAI漫画騒動を整理|仕組み・問題となった作品一覧・著作権リスクをわかりやすく
週刊ヤングジャンプ(ヤンジャン)の新人漫画大賞で、生成AIで作られた疑いのある作品が受賞したとして大きな議論が起きています。SNSでは「AI漫画に賞金43万円」「審査基準は大丈夫か」といった声が飛び交い、漫画賞のあり方や著作権リスクまで論点が広がっています。この記事では、2025-11-27 時点で報じられている情報をもとに、仕組み・作品一覧・著作権まわりのポイントを整理します(この記事の基準日は 2025-11-27 です)。
ヤンジャンAI漫画騒動の概要|何が起きているのか
発端となったのは、第36回ヤングジャンプ新人漫画大賞で佳作+月間ベスト賞を受賞したとされる読切作品「御国の羽々斬様」(作者名:森永侮瑠戊ン・表記揺れあり)です。X(旧Twitter)で公式アカウントが受賞を告知したところ、キャラクターの指や目、髪の処理に不自然な箇所が多数あるとして、「生成AIで作られたのではないか」という疑惑が一気に拡散しました。
現在出ているポイントを整理すると、次のようになります。
- 受賞作には、手や耳、背景などに生成AI特有とされる崩れ方が複数見られると指摘されている。
- 作者本人が「スマホ一台で完結するAI漫画の作り方」を紹介するノート記事を公開し、作品と関係すると見られる画像が掲載されている。
- しかし、編集部から公式に「AI使用を認めた/否定した」声明は出ておらず、あくまで疑惑段階と整理した解説記事も存在する。
- 応募要項に「生成AIの使用禁止」が明記されていたかどうかはグレーで、「禁止していないから問題ない」という擁護と「手描き勢と不公平」という批判が真っ向からぶつかっている。
つまり現時点では、作品がどの程度AIに依存しているかは公式には未確定であり、「編集部の審査姿勢」「今後の募集要項をどうするか」という制度面が大きな焦点になっています。
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この章の要点
- 問題になっているのは、第36回ヤングジャンプ新人漫画大賞で受賞した読切作品「御国の羽々斬様」です。
- 作画の不自然さや作者自身のノート記事などからAI使用疑惑が広がっていますが、編集部からの公式コメントはまだ出ていません。
- 「規約で禁止されていない」「手描き作家との不公平」といった観点から、漫画賞とAIの関係そのものが問われています。
問題となっている作品・関連するAI漫画の一覧
2025-11-27 時点で、ヤンジャン周辺で話題になっているAI漫画・関連トピックをまとめると、主なものは次の通りです(確定してAI使用と認定されたものではなく、「疑惑」や「議論の対象」として挙がっているものも含みます)。
| カテゴリ | 作品・事例名 | 概要 | AIとの関わり・現状 |
|---|---|---|---|
| 新人漫画大賞受賞作 | 御国の羽々斬様 | 第36回ヤングジャンプ新人漫画大賞で佳作+月間ベスト賞。賞金合計約43万円と報じられる。 | 作画崩れや作者のノート記事から「全編生成AIでは」との疑惑が拡散。公式にはAI使用の有無は明言されていない。 |
| 解説コンテンツ | 「AIで漫画を描く方法」系ノート記事 | 作者とされる人物が、スマホ一台で完結するAI漫画制作フローを解説した記事を公開。 | 具体的なプロンプトやアプリ名はぼかしつつも、「フルカラー漫画をAIで量産できる」ことをアピールしている。 |
| 業界トラブル | ヤンジャン漫画家の絵柄を学習させたAIモデル配布騒動 | 2024年頃、現役ヤンジャン漫画家の絵を学習させたとされるAIモデルが無断配布され、作者側が強く抗議した事例。 | 「特定作家のスタイルを真似るAIモデル」は、著作権・人格権侵害になりうるとの議論が高まった。 |
| 一般的な動向 | ヤンジャン関連コンテスト・Web漫画賞 | 「となりのヤングジャンプ」やpixivとのコラボ企画など、多数の新人向け賞が存在する。 | 多くはAIに関する明確なルールがなく、今回の騒動を受けて規約の見直しが求められている。 |
重要なのは、「どの作品がどの程度AIを使っているのかは現時点で完全には確定していない」という点です。確定情報と憶測が混ざりやすいため、個人攻撃にならないよう注意が必要です。
この章の要点
- 「御国の羽々斬様」が今回の中心的なトピックですが、編集部からAI使用に関する正式な認定は出ていません。
- 過去にはヤンジャン漫画家の絵柄を学習したAIモデルが無断配布された問題もあり、「AI×ヤンジャン」は以前から火種を抱えていました。
- ヤンジャン周辺のコンテストでは、AI利用ルールが明確でない企画も多く、今後の整備が課題です。
AI漫画はどう作られる?ヤンジャン騒動で話題の「仕組み」
今回の騒動とあわせて、作者とされる人物が公開した「スマホ一台でAI漫画を描く方法」ノートが話題になりました。そこでは、具体的なアプリ名などは伏せつつも、次のような一般的なワークフローが紹介されています。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. プロンプト作成 | キャラの外見・構図・雰囲気などをテキストで指示 | 「和風」「刀」「少女」などのキーワードを組み合わせて生成 |
| 2. 画像生成 | 画像生成AIでラフイラストを多数出力 | 気に入ったものを選び、必要に応じて再生成・リメイク |
| 3. コマ割り・レイアウト | 生成画像をコマごとにトリミングし、スマホアプリや画像編集ソフトで配置 | 同じキャラの顔・体型を揃えるのが難しく、破綻の原因になりやすい |
| 4. 吹き出し・セリフ入れ | セリフを入力し、吹き出しや効果線を追加 | ここは人力で行うケースが多いが、LLMに台詞案を考えさせる例もある |
| 5. 仕上げ・書き出し | トーンや背景の調整を行い、ページ単位のデータとして書き出し | 印刷・電子配信用に解像度やサイズを整える |
つまり、「ネーム・構成:人」「作画:AI中心」「仕上げ:人+ツール」という分業に近い形で作品を作ることができてしまいます。一方で、キャラの一貫性・背景の整合性・パースなど、現在の生成AIが苦手とする点も多く、違和感として現れやすいのが実情です。
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この章の要点
- スマホ+生成AIだけでも「それなりに見える漫画」を作ることは技術的には可能になっています。
- ただしキャラの一貫性やパースなど、現状のAIが苦手な部分は破綻しやすく、違和感として読者に伝わりやすいです。
- 今回の騒動は、そうした「AIらしさ」をどこまで許容するかという価値観の問題も含んでいます。
著作権・コンテスト規約の論点|何が問題視されているのか
ヤンジャンAI漫画騒動で特に注目されているのが、著作権とコンテスト規約の問題です。ここでは一般論として整理します(個別案件の違法性を断定するものではありません)。
1. 応募規約に「AI禁止」がなかった問題
第36回ヤングジャンプ新人漫画大賞の応募要項には、「生成AIの使用禁止」を明示した条項がなかったのではないかとする指摘があります。これに対して、
- 「禁止と書いていない以上、AIを使っても規約違反ではない」という擁護
- 「手描き前提だと信じて時間をかけて描いた応募者との公平性が損なわれる」という批判
がぶつかっています。法律上の違法性とは別に、「賞の信頼性」や「応募者との約束」の観点から問題視されていると言えます。
2. 生成AIと著作権法(日本)のざっくり整理
日本の著作権法では、AI学習のためのデータ利用について、条件付きで権利者の許諾なしに利用できる「情報解析」例外(いわゆる著作権法30条の4)が設けられています。ただし、
- 学習に使われるデータセットの実態が不透明で、「無断アップロード作品」が含まれていないか。
- 特定作家の絵柄を過度に模倣する「スタイル模倣モデル」が人格権侵害や不正競争にならないか。
- 生成された画像そのものに、元作品の「実質的な類似」がある場合どう扱うか。
など、実務レベルで未解決の論点は非常に多いのが現状です。文化庁も、AI向けデータセット流通環境の整備などを検討しており、国全体としても議論は進行中です。
3. 「AI作品に賞を与えること」の文化的インパクト
今回の騒動では、「9割以上をAIが作った作品に賞金を与えるのは、文化を壊す」という強い批判も見られました。 一方で、
- 「AIを操る技術もまたスキルであり、まったく否定すべきではない」という意見
- 「AIを補助ツールとしつつ、ネームや構成に作家性を出す新しい表現もありうる」という立場
も存在します。重要なのは、「どこまでが人間の創作とみなされるのか」「その情報をどこまで読者・応募者に開示するのか」というルール作りであり、ヤンジャンに限らず漫画業界全体が避けて通れないテーマになりつつあります。
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この章の要点
- 今回のケースでは、「規約上AI禁止かどうか」と「クリエイター同士の公平性」が大きな論点です。
- 日本の著作権法はAI学習を一定程度認めていますが、スタイル模倣や生成物の扱いなど未整理の部分も多くあります。
- AI作品への賞与は、単にルールの問題だけでなく、「文化として何を大事にするか」という価値判断にも関わってきます。
手描き作家・読者・編集部にとっての今後の課題
ヤンジャンAI漫画騒動は、特定作品の是非にとどまらず、「これから漫画賞や編集部がどうAIと付き合うか」という中長期的な課題を突きつけています。
- 手描き作家:練習に何年もかかるスキルと「スマホ+AI」の競争にならないよう、応募区分や評価軸の明確化を求める声が強い。
- 読者:「人が描いたのかAI中心なのか」は、作品の価値判断に影響するという意識が広がっている。
- 編集部・出版社:AIの利用可否・開示義務・審査体制などを含むガイドライン整備が急務であり、対応を誤るとブランド毀損のリスクもある。
今後考えられる方向性としては、
- 「AI不使用部門」「AI利用可部門」を分ける二本立ての漫画賞
- 応募時にAI使用の有無・範囲を申告させ、読者にも明示する仕組み
- 特定作家の絵柄模倣など、明確にNGなラインを規約に書き込む
などが挙げられます。どの案を採るにせよ、作家・読者・編集部が納得できるルール作りと対話が鍵になります。
この章の要点
- ヤンジャンAI漫画騒動は、漫画業界全体の「AIとの付き合い方」を問う出来事になっています。
- 手描き作家のモチベーションや読者の信頼を守るためにも、AI利用ルールと情報開示の整備が重要です。
- 今後は、AI可・不可を分けた部門制度や、AI利用の申告制などが検討されていく可能性があります。
まとめ|ヤンジャンAI漫画問題をどう受け止めるか
ヤンジャンのAI漫画騒動は、「AIが漫画賞を取る時代」に突入したことを象徴する出来事でもあります。一方で、現時点では作品がどこまでAI依存なのか・編集部がどう判断しているのかは公式に明らかになっておらず、断定的な評価は避ける必要があります。
読者・作家としてできるのは、
- 感情的な個人攻撃ではなく、「賞の規約」「著作権」「業界の持続性」といった論点に目を向けること
- 自分なりの「AI創作との距離感」を考えつつ、作品を選び、意見を発信していくこと
- 公式な説明やガイドラインが出てきたら、内容を読み込み、必要であれば建設的にフィードバックすること
です。AIと人間の創作がどう共存していくのか──ヤンジャンの一件は、その大きなテーマを考えるきっかけとして受け止めておくとよさそうです。

