再建築不可とは?原因・見分け方・解消策・購入時の注意点を徹底解説【保存版】
要点サマリ
- 定義:敷地が建築基準法の接道義務(原則「幅員4m以上の道路」に2m以上接する)を満たさず、建て替えの確認申請が下りない土地。
- 主因:前面道路が「法42条の道路でない」「幅員不足」「接道2m未満」「私道の権利問題」。
- リスク:住宅ローンが通りにくい・売却しづらい・資産価値が低い(一般相場より3〜5割安になりがち)。
- 対処の軸:①セットバックで2項道路化、②位置指定道路の整備承継、③私道持分・掘削承諾の確保、④隣地取得・合筆で2m接道確保、⑤43条但し書き許可(例外許可)。
1. 法律の基礎:接道義務と「道路」の定義
- 接道義務(建築基準法43条)
原則:幅員4m以上の道路(法42条の道路)に、敷地が2m以上連続して接すること。 - 道路の種類(法42条)ざっくり
- 1項1〜5号道路:既成市街地の公道・都市計画道路等
- 2項道路(みなし道路):幅員4m未満でも、中心線から**2m後退(セットバック)**して道路とみなす
- 位置指定道路:開発時に幅4m以上で行政が位置指定した私道(承継・管理が重要)
前面がただの通路・農道・里道等で42条該当でない/権利がない場合、再建築不可になり得ます。
2. なぜ再建築不可になる?代表パターン
- 道路そのものが“法的な道路”でない(42条該当外)
- 接道が2m未満(旗竿地の竿部分が細すぎる等)
- 前面道路の幅員が4m未満かつセットバック不能(対向地が河川・崖・他者不同意)
- 位置指定道路だが承継不備(道路の管理・通行掘削承諾・延長同意が未整備)
- 私道持分なし・掘削承諾なし(上下水・ガス工事ができない)
3. まずの見分け方チェックリスト
- 道路種別:市区町村の建築指導課で法42条の道路か確認
- 幅員:実測+台帳で4m以上か/2項道路なら後退ラインが出ているか
- 接道長:敷地が2m以上連続接道か(角地は接する辺で確認)
- 私道:持分登記はあるか/通行・掘削承諾書は揃うか
- インフラ:上下水・ガスの前面配管と引込可否
- 擁壁・高低差:道路と敷地の段差、老朽擁壁の扱い
- 都市計画:将来の**道路拡幅(都市計画道路)**有無
4. 解消・回避する方法(実務順)
4-1. セットバックで解消(2項道路)
- 道路中心線から2m後退して敷地を道路に提供(原則建築不可部分)。
- 隅切りが必要な角地も。後退後の有効敷地で建蔽・容積を再計算。
4-2. 位置指定道路の整備・承継
- 開発当時の位置指定図・承認番号を建築指導課で確認。
- 私道所有者全員の承諾・管理規約を整備し、掘削承諾を文書化。
4-3. 私道権利の確保
- 持分取得または通行・掘削承諾書を売買条件に。ローン審査も通りやすくなる。
4-4. 隣地の一部取得・合筆
- 旗竿の竿幅を2m以上にする等、物理的に接道確保。費用と交渉難度は高いが確実。
4-5. 43条但し書き許可(例外)
- 消防通行・避難安全が確保され、周辺と同程度の安全性が担保される特別なケースで、
建築審査会の許可により認められることがある。 - 自治体裁量が大きくハードル高。事前相談必須。
5. 買う前に知るリスクと価格感
- 価格:同等立地の「建築可」より30〜50%安が目安だが、出口(売却)も弱い。
- 融資:多くの銀行で住宅ローン不可(リフォームローン・プロパー融資等に限定)。
- 用途制限:建て替え不可、増築も原則不可。構造や用途を変えない修繕・模様替えは一定範囲で可能。
- 保険・査定:地形・擁壁・狭隘道路は保険料・査定に影響。
6. 再建築不可の活用例(現実路線)
- 古家賃貸(リフォーム):軽微な改修で賃貸。利回りは出やすいが修繕計画が鍵。
- 簡易宿泊・アトリエ等:法・近隣調整のハードルを確認。
- 買取再販:セットバックや私道権利整理後に価値向上(プロ向け)。
- 更地化は価値が下がることが多い(“建物付き”の方が利用余地が残るため)。
7. 交渉・契約のコツ
- 売買契約に停止条件を入れる:
- 例)「私道掘削承諾取得」「セットバック範囲確定」「43条許可取得」等が未達なら白紙解除。
- 役所の事前相談メモを残す(窓口・日付・回答者・要点)。
- 測量図・道路境界確定を売主負担で実施できるとベター。
8. よくある誤解Q&A
Q. 再建築不可は絶対に建て替えできない?
A. 原則不可。ただし接道要件を満たす改善や43条但し書き許可で可能になる例はあります(要事前相談)。
Q. セットバックすれば必ず建てられる?
A. 相対側が河川・崖などで中心線が取れない、または安全・インフラ要件でNGになる場合があります。
Q. リフォームは自由?
A. 構造に影響しない修繕・模様替えの範囲は可能。増築・用途変更・構造変更は基本不可と思って計画を。
9. 相談の窓口(順番)
- 市区町村 建築指導課:道路種別・セットバック・43条許可の運用
- 道路管理者/道路台帳:幅員・境界・将来拡幅
- 法務局:私道の所有者・持分
- 上下水道局・ガス会社:前面管・引込可否
- 専門家:建築士・不動産士・司法書士(契約条項・承諾書)
まとめ|“道路×2m×権利”の三点セットを最初に確認
再建築不可の肝は、
- 法42条の道路か
- 2m以上の接道が取れるか
- 私道の権利・承諾が揃うか
の三点。ここをクリアできる改善余地があるなら、セットバック・権利整理・位置指定の承継で建替可能性が開けます。
買うなら必ず総額(整備費含む)と出口を見据え、停止条件付き契約+役所事前相談で“詰めてから”動きましょう。

