ノロウイルス回復期に食べられる物|いつもの食事に戻す3ステップ
現在、ノロウイルスなどの感染性胃腸炎は、多くの場合1〜3日程度で主な症状が落ち着くとされていますが、症状が薄れてからもしばらくは腸がデリケートな状態です。「もう大丈夫」といきなり普通食に戻すと、腹痛や下痢がぶり返すことも。本記事では、ノロ回復期に食べられる物と、通常食への戻し方を3ステップで解説します。
ノロ「回復期」とはどんな状態?
回復期とは、急性期(強い嘔吐・下痢・腹痛など)が落ち着き、少しずつ食べられるようになってきた時期を指します。感染性胃腸炎のパンフレットなどでも、下痢や嘔吐が治まってから数日間は消化の良い食事を続けるよう勧められています。
| 段階 | 症状の目安 | 食事の状態の目安 |
|---|---|---|
| 急性期 | 強い吐き気・嘔吐・水様性下痢・腹痛・発熱が目立つ。 | 水分中心。食事はほとんどとれないか、ごく少量。 |
| 回復期初期 | 嘔吐はほぼ止まり、下痢の回数が減ってくる。だるさは残る。 | おかゆ・うどんなど、ごく消化に良いものなら少し食べられる。 |
| 回復期後半 | 下痢も落ち着き、お腹の張りや違和感が少し残る程度。 | 量と種類を増やしながら、通常食に近づけていける。 |
この章の要点
- 「吐き気がほぼなくなり、下痢が減ってきた頃」が回復期のスタートの目安。
- 体は楽になってきても、腸はまだ完全には元通りではない。
- この時期の食べ方が、その後の回復スピードを左右しやすい。
ステップ1:回復期初期に食べられる物
回復期の入口では、とにかく「非常に消化の良いもの」を少量ずつが基本です。小児向けの指導でも、水分と消化の良い炭水化物から始めることが推奨されています。
| ジャンル | 具体的なメニュー例 | ポイント |
|---|---|---|
| 主食 | 重湯〜おかゆ(5分がゆ〜7分がゆ)、やわらかく煮たうどん・そうめん。 | 塩やだしを薄めに。油は使わない。 |
| スープ | 野菜スープ(にんじん・じゃがいも・かぼちゃなどをよく煮て裏ごし)、味噌汁の具を少なめにしたもの。 | 具は細かく・柔らかく。熱すぎない温度で少しずつ。 |
| たんぱく質 | 絹ごし豆腐、白身魚の煮物、卵スープ(少量から)。 | 脂の多い肉はまだ控えめに。 |
| 果物 | 熟したバナナ、すりおろしりんご、りんごのコンポート。 | 冷えたものより常温〜少し温かいものが胃にやさしい。 |
この章の要点
- まずはおかゆ・うどん・スープ・バナナなど「とろっとしてやわらかいもの」から。
- 量はいつもの半分以下に抑え、1日数回に分けて少しずつ食べる。
- 食後に下痢や腹痛が悪化するようなら、さらに量を減らすか一度水分中心に戻す。
ステップ2:回復期後半に広げられる食べ物
回復期初期の食事で問題がなければ、2〜3日かけて少しずつ食材と量を増やしていきます。
| 増やしていく食品 | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| ご飯 | やわらかめの白ご飯、小さなおにぎり。 | 玄米や雑穀はまだ避ける。 |
| 肉・魚 | 脂身の少ない鶏ささみの照り焼き風(油少なめ)、白身魚の蒸し焼き。 | 揚げ物・こってりソースはNG。味つけは薄めに。 |
| 野菜 | かぼちゃ・にんじん・じゃがいも・大根など、よく煮た根菜類。 | ごぼう・れんこん・きのこ類などの繊維が多いものはもう少し後で。 |
| 乳製品 | プレーンヨーグルト、牛乳を少量ずつ。 | 人によっては下痢が悪化するため、様子を見ながら量を調整。 |
この章の要点
- 「種類を増やすときも、油と味つけは控えめ」が基本。
- 1〜2種類ずつ試し、問題がなければ翌日量を少し増やすイメージで進める。
- 違和感が出たら、その食品を一旦ストップし、様子を見ながら再チャレンジする。
ステップ3:通常食への戻し方と注意したいNG食品
下痢や腹痛がほぼ治まり、軟便〜普通便に近づいてきたら、いよいよ通常の食事へ戻す段階です。ただし、いきなり元の食生活に戻すのではなく、次のような順番を意識すると安心です。
| 段階 | できるようになること | まだ注意したい食品 |
|---|---|---|
| 通常食へ「ほぼ復帰」 | 3食しっかり食べられる/外食も量と内容を選べばOK。 | こってりラーメン・揚げ物たっぷりのセットなど、脂と塩分が多いもの。 |
| 刺激の強い食品 | 少量のスパイス料理、カレーなど。 | 激辛料理・アルコール多めの飲み会などはもうしばらく控える。 |
| 生もの | よく洗ったサラダ、刺身などを少量から。 | 体調に自信がつくまでは、食べ放題・生ガキなどリスクの高いものは避ける。 |
この章の要点
- 通常食に戻れそうでも、「脂・刺激・生もの」は一気に増やさない。
- 仕事・学校・外食などの予定がある日は、前後の食事を軽めにして調整する。
- 便の状態やお腹の張りを見ながら、自分のペースで戻していくことが大切。
回復期の年齢別ポイント(子ども・大人・高齢者)
回復期の食事は、年齢や体調によって注意点が少し変わります。
| 対象 | ポイント |
|---|---|
| 子ども | 急に元気になって食べ過ぎることがあるため、量を大人がコントロールする/好きなお菓子やジュースは回復が安定するまで控えめに。 |
| 大人 | 仕事復帰後に外食やコンビニ弁当が続くと、腸に負担がかかりやすい/忙しくても朝食を抜かず、軽いものをとる。 |
| 高齢者 | 少しの食事量低下や下痢でも、栄養不足・脱水になりやすい/少量高エネルギーの食品や栄養補助食品の活用も検討。 |
この章の要点
- 子どもは「元気になった途端の食べ過ぎ」、高齢者は「食べなさすぎ」に要注意。
- 大人でも、仕事や家事で無理をすると回復が遅れることがある。
- 心配な場合は、年齢や持病に応じて医師や管理栄養士に相談するのが安心。
回復期の食事と同時に意識したい「感染対策」
症状が落ち着いても、ノロウイルスは1週間〜1か月程度便中に排出されることがあると報告されています。回復期でも、家庭内や職場での感染対策は続ける必要があります。
| 場面 | 対策の例 |
|---|---|
| トイレ後 | 石けんでの手洗いを30秒程度しっかり行う/ハンドソープ+流水が基本。 |
| 調理・配膳 | 回復後しばらくは、体調が万全でない日は調理を他の家族に任せる/生ものの取り扱いに特に注意。 |
| タオル・食器 | タオル・コップ・箸を共有しない/食器は洗剤でよく洗い、可能なら高温乾燥。 |
この章の要点
- 「症状が治った=うつらない」ではない点に注意。
- 回復期の数日間は、特に調理や配膳を担当するときに慎重な衛生管理が必要。
- 家族や職場に高齢者・乳幼児・妊婦・持病のある人がいる場合は、より丁寧な対策を心がける。

