ノロウイルス対策の次亜塩素酸ナトリウム消毒液の作り方|家庭用漂白剤から安全に作るコツ
現在、日本の自治体や公的機関は、ノロウイルス対策として次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)を適切な濃度に薄めて使う方法を紹介しています。一方で、「濃度の計算が難しい」「次亜塩素酸水と何が違うの?」など、分かりにくい点も多いテーマです。このページでは、家庭で市販の漂白剤から安全に消毒液を作るときの考え方と手順を、できるだけ分かりやすく整理します。
「次亜塩素酸ナトリウム」と「次亜塩素酸水」の違い
まず混同されやすい2つの言葉の違いを確認しておきます。
| 名称 | 主な中身 | 家庭での例 |
|---|---|---|
| 次亜塩素酸ナトリウム | NaClO を主成分とするアルカリ性の塩素系薬剤 | 台所用・衣類用の塩素系漂白剤(ボトル入り)など |
| 次亜塩素酸水 | 電解などで作られた、次亜塩素酸(HClO)主体の水溶液 | 市販の「弱酸性次亜塩素酸水」など(食品や手指向けとして販売されることも) |
ノロウイルス対策として、国や自治体の資料でトイレや床・調理器具の消毒に推奨されているのは主に「次亜塩素酸ナトリウム」=塩素系漂白剤です。本記事でも、この「漂白剤を希釈した消毒液」の作り方を扱います。
この章の要点
- ここで扱うのは、家庭用漂白剤に含まれる次亜塩素酸ナトリウムの希釈液。
- 「次亜塩素酸水」とは性質や使い方が異なるので、ラベルをよく読むことが大切。
- ノロ対策では、トイレや吐瀉物周囲の消毒に次亜塩素酸ナトリウムが広く推奨されている。
ノロ対策でよく使われる濃度の目安(0.02%と0.1%)
日本の自治体資料などでは、ノロ対策としておおむね次のような濃度が目安として示されることが多いです。
| 用途 | 目安濃度 | 使う場面の例 |
|---|---|---|
| 環境表面(ドアノブ・便座・レバーなど) | 約0.02%(200ppm程度) | トイレまわりの拭き掃除、調理器具やシンクの最終消毒など |
| 吐瀉物・便が直接付着した場所 | 約0.1%(1000ppm程度) | 床やトイレに嘔吐・下痢便が付いた周辺の重点消毒など |
実際には、使用する漂白剤の有効塩素濃度(例:5%・6%など)によって必要な希釈割合が変わります。ラベルや自治体の一覧表に「〇%にするには、水◯Lに対して本剤◯mL」と書かれている場合は、その指示に従うのが最も安全です。
この章の要点
- ノロ対策では、0.02%(環境)と0.1%(汚染部位)がよく使われる目安濃度。
- どの濃度を使うかは、「どれだけ汚れているか」「どこを消毒するか」で決める。
- 具体的な希釈量は、必ず漂白剤ラベルや自治体資料の指示を確認する。
家庭用漂白剤からの作り方の考え方(計算のイメージ)
ここでは、計算のイメージを掴むための「考え方」を紹介します。実際の作成時は、必ずお手持ちの製品ラベルや自治体の具体的な計算例を優先してください。
- 例)有効塩素濃度が6%の漂白剤から0.1%の消毒液を1L作りたい場合
- 必要な漂白剤の量=(作りたい濃度 ÷ 元の濃度)× 全体量
- =(0.1 ÷ 6)× 1000mL ≒ 16.6mL
- 実際には約17mL(大さじ1杯強)を目安として、水を足して1Lにするイメージ。
- 同じ6%漂白剤から0.02%溶液を1L作る場合
- (0.02 ÷ 6)× 1000mL ≒ 3.3mL
- 約3〜4mL(小さじ1弱)を水で薄めて1Lにするイメージ。
「計算がややこしい」と感じる場合は、水約4Lに対して大さじ5杯の漂白剤で0.1%前後、など大きな単位で作る海外の例を参考にする方法もあります(ただし製品濃度や単位が日本と異なる場合があるため注意)。
この章の要点
- 計算式は「作りたい濃度 ÷ 漂白剤の濃度 × 作りたい量」で考えられる。
- 6%漂白剤から0.1%溶液1Lを作る場合、漂白剤はおよそ17mLが目安。
- 不安なときは、自治体が出している「早見表」やラベルの具体例を利用する。
次亜塩素酸ナトリウム消毒液の作り方・安全な手順
実際に作るときの基本的な流れを整理します。
| ステップ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 換気と準備 | 窓を開けて換気し、ゴム手袋・エプロンを着用する。バケツやペットボトルなど「専用」の容器を用意。 | 金属容器よりプラスチック容器のほうが扱いやすい。 |
| 2. 水を先に入れる | 必要な量の水を先に容器へ入れる。 | 先に水を入れておくと、飛び散りや濃度のブレを減らせる。 |
| 3. 漂白剤を計量して加える | 必要量の漂白剤を計量カップやスプーンで量り、水に加える。 | こぼさないようにゆっくり注ぎ、飛まつを吸い込まないように顔を近づけすぎない。 |
| 4. 軽くかき混ぜる | 専用の棒やスプーンで軽くかき混ぜる。 | 他の用途に使わない道具を「消毒用」として決めておく。 |
| 5. その日のうちに使い切る | 作り置きはせず、基本的にはその日のうちに使い切る。 | 時間が経つと有効塩素が減るほか、安全性の面でも新鮮なものが望ましい。 |
この章の要点
- 必ず換気し、手袋・エプロンを着けてから作業する。
- 水→漂白剤の順に入れ、飛まつを吸い込まないように注意する。
- 作った消毒液は、可能な限り「その日のうちに使い切る」前提で扱う。
よくある疑問:保存期間・使えない場所・酸性洗剤との併用など
- Q. 作った消毒液はどれくらい保存できますか?
A. 一般的には、時間とともに有効成分が減っていくため、家庭では「その日のうちに使い切る」運用が安全とされています。直射日光・高温を避けても、長期保存は避けるのが無難です。 - Q. 金属や衣類にも使えますか?
A. 金属はさび、衣類やカーペットは色落ちの原因になることがあります。目立たない場所で試すか、色物には使用を控えるなどの工夫が必要です。 - Q. 酸性洗剤と一緒に使っても大丈夫?
A. 塩素系漂白剤(=次亜塩素酸ナトリウム)を酸性洗剤と混ぜると、有害なガスが発生するおそれがあります。「混ぜるな危険」の表示がある組み合わせは絶対に避け、同じ場所に使う場合も十分な水で洗い流してからにします。
この章の要点
- 作り置きは避け、こまめに新しい消毒液を作るほうが安全。
- 金属・色物の布類は、さび・色落ちに注意して慎重に扱う。
- 酸性洗剤とは絶対に混ぜない。ラベルの「混ぜるな危険」は必ず守る。

