◆ はじめに:なぜ「建築確認申請」が必要なのか?
家を建てる、アパートを建てる、店舗をリフォームする──
建築工事を行う前には、必ず守らなければならない法律があります。
それが 「建築基準法」 です。
そして、その法律に適合しているかを事前にチェックする制度が
「建築確認申請(けんちくかくにんしんせい)」 です。
簡単に言うと、
「この建物は安全で、法律に違反していませんよ」というお墨付きを得るための申請手続き
です。
◆ 建築確認申請とは?【定義と目的】
建築確認申請とは、建築主(施主)が行う
建築計画が建築基準法や関係法令に適合しているかを確認するための事前審査
のことです。
申請は、建築主(施主)または建築士が、
自治体または指定確認検査機関に対して行います。
確認に合格すると「建築確認済証」が交付され、
これを受けて初めて工事を着工できます。
◆ 建築確認申請が必要な建築物とは?
建築基準法第6条で、建築確認が必要な建築物は次のように定められています。
| 区分 | 必要かどうか |
|---|---|
| 市街化区域内のすべての建築物 | 原則、すべて必要 |
| 都市計画区域・準都市計画区域内 | 一定規模以上は必要 |
| 都市計画区域外 | 原則不要だが、防火・安全面の規制は適用される場合あり |
つまり、
都市計画区域内で建てる建物のほとんどは建築確認が必要です。
例:
- 一戸建て住宅
- マンション・アパート
- 店舗・倉庫・事務所
- 増改築(10㎡を超える場合)
◆ 建築確認申請の提出先
申請先は、以下のいずれかになります。
- 各自治体の建築指導課(特定行政庁)
- 民間の指定確認検査機関(例:日本ERI、JIO、ビューローベリタスなど)
近年は、民間機関での申請が主流になっており、
審査スピードも比較的早い傾向があります。
◆ 建築確認申請の流れ(6ステップで解説)
① 事前相談
建築予定地の用途地域・防火地域・建ぺい率・容積率などを役所で確認します。
ここで建てられる建物の規模・用途が決まります。
② 設計図書の作成
建築士が法令に基づいて、以下の図面を作成します。
- 配置図
- 各階平面図
- 立面図・断面図
- 構造図
- 設備図
③ 建築確認申請書の提出
申請者(建築主または建築士)が、確認申請書と図面一式を提出します。
必要に応じて、消防・道路・下水道など関係機関の事前協議も行います。
④ 審査
提出書類が法令に適合しているかを審査されます。
通常、住宅なら7〜14日程度、非住宅なら1〜2か月程度かかります。
⑤ 建築確認済証の交付
審査に合格すると「確認済証」が発行されます。
これが発行されて初めて、工事に着手できます。
⑥ 中間検査・完了検査
建築物が完成したら「完了検査」を受け、合格すると検査済証が交付されます。
これにより、正式に建築物として使用可能となります。
◆ 建築確認申請に必要な書類一覧
申請時には、以下の書類が必要です(建物の種類により異なる)。
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 建築確認申請書 | 建築主・設計者の情報、建物概要を記載 |
| 委任状 | 建築士に申請を任せる場合 |
| 配置図・平面図・立面図 | 敷地・建物の形状、用途を示す |
| 構造図・設備図 | 構造・配管・防火区画などを確認 |
| 各種計算書 | 構造計算・日影規制・採光計算など |
| 関係機関の同意書 | 道路・下水・消防などの許可・同意書類 |
◆ 建築確認申請の費用
建築確認の審査には手数料がかかります。
費用は建物の規模・構造・用途によって異なりますが、
おおよその目安は以下の通りです。
| 建物種別 | 構造 | 目安費用 |
|---|---|---|
| 一戸建て住宅(木造) | 木造2階建て | 約3〜7万円 |
| アパート(中規模) | 木造・鉄骨造 | 約10〜30万円 |
| 商業施設・RC造 | 大規模建築 | 数十万円〜100万円以上 |
※民間機関に依頼する場合は、手数料が若干高くなる傾向があります。
◆ 建築確認申請が不要なケース
以下のような小規模な工事は、建築確認が不要な場合があります。
- 10㎡以下の増築(防火地域を除く)
- 軽微なリフォーム(内装・間仕切り変更など)
- 建築物でない仮設物(仮設プレハブ、倉庫など一定期間のみ)
ただし、建築確認が不要でも「構造安全性」「防火基準」「条例」などは遵守する必要があります。
◆ 建築確認申請でよくある不備・トラブル
- 用途地域・道路幅員の誤認
→ 容積率オーバー・接道義務違反で申請却下。 - 図面・計算書の不整合
→ 建築士の図面チェック不足。 - 消防・下水道など関係機関との事前協議漏れ
→ 審査が長引く原因に。 - 確認済証なしで工事を始めてしまう
→ 違法建築となり、後から是正命令・罰則の対象になることも。
◆ 建築確認申請のオンライン化(電子申請)
2022年以降、「建築確認申請の電子化」が全国で進んでいます。
「確認申請システム(確認検査機関連携)」を利用すれば、
図面データや申請書をオンラインで提出できるようになり、
審査期間の短縮・書類のペーパーレス化が実現しています。
◆ まとめ:建築確認申請は“建てる前の安全チェック”
- 建築確認申請=建物が法令に適合しているかの審査手続き
- 確認済証がないまま工事を始めると違法建築
- 審査には1〜2週間(住宅の場合)かかる
- 申請図面や法規チェックは建築士が中心に行う
建築確認は、建築物の安全・防火・都市計画上の適合性を守るための重要な制度です。
建て主が安心して暮らせる建物をつくる第一歩として、
必ず正しい手続きを踏みましょう。

