◆ はじめに:建築士は「国家資格の中でも人気の高い専門職」
街で見かける住宅・マンション・商業施設・公共建築物──
そのすべてに関わるのが「建築士(けんちくし)」です。
建築士は、建物の設計や工事監理を行う国家資格であり、
一級建築士・二級建築士・木造建築士の3種類があります。
この資格を取得するには、大学や専門学校などで所定の学歴・実務経験を積む必要があります。
この記事では、建築士になるための大学選び・資格要件・進路の実例をわかりやすく解説します。
◆ 建築士の種類と違いを理解しよう
まず、「建築士」といっても3つの資格があり、それぞれ扱える建物の規模や用途が異なります。
| 資格名 | 設計できる建物 | 難易度 | 主な就職先 |
|---|---|---|---|
| 一級建築士 | すべての建築物(超高層ビル・公共施設など) | ★★★★★ | 大手ゼネコン、設計事務所、官公庁 |
| 二級建築士 | 戸建住宅・中小規模の建物まで | ★★★☆☆ | 工務店、ハウスメーカー、設計事務所 |
| 木造建築士 | 木造2階建て以下の小規模建築物 | ★★☆☆☆ | 木造住宅メーカー、地域工務店など |
多くの学生は、まず「二級建築士」から取得し、
経験を積んで「一級建築士」を目指すルートを選びます。
◆ 建築士になるための大学の学部・学科
建築士を目指すなら、建築系の学部・学科に進学するのが一般的です。
🔹 主な学部・学科名の例
- 建築学部・建築学科
- 工学部 建築学科
- デザイン工学部 建築デザイン学科
- 環境デザイン学科・都市環境学科
- 生活科学部 住居学科 など
🔹 学べる主な内容
| 分野 | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 構造系 | 耐震構造・鉄筋・木造などの構造設計 |
| 設計系 | 建築デザイン・CAD・模型制作 |
| 設備系 | 空調・給排水・電気設備の計画 |
| 法規系 | 建築基準法・都市計画法・関連法規 |
| 環境系 | 省エネ建築・サステナブルデザイン |
大学では、「理系的な構造・法規」と「芸術的なデザイン」の両方を学びます。
そのため、建築学科は理系+クリエイティブ要素を併せ持つ学問分野です。
◆ 建築士資格を取得するための受験資格
建築士試験を受けるには、学歴と実務経験が必要です。
大学でどの課程を修了したかによって、受験までの流れが異なります。
🔹 一級建築士の受験資格(主な例)
| 学歴 | 必要な実務経験年数 |
|---|---|
| 大学(4年制・建築学科卒) | 2年以上 |
| 短期大学・専門学校(3年制・建築学科卒) | 3年以上 |
| 高専卒(5年制) | 4年以上 |
| 高校卒(建築系) | 7年以上 |
🔹 二級建築士の受験資格
| 学歴 | 必要な実務経験年数 |
|---|---|
| 大学・短大・専門学校(建築学科卒) | 実務経験なしで受験可能 |
| 建築以外の学科卒 | 3年以上の実務経験が必要 |
| 高校建築科卒 | 2年以上の実務経験が必要 |
つまり、建築学科を卒業していれば最短ルートで建築士試験に挑戦できるというわけです。
◆ 建築士を目指せる主な大学(全国の代表例)
🔹 国公立大学
| 大学名 | 学部・学科 |
|---|---|
| 東京大学 | 工学部 建築学科 |
| 京都大学 | 工学部 建築学科 |
| 東京工業大学 | 環境・社会理工学院 建築学系 |
| 名古屋大学 | 工学部 建築学科 |
| 九州大学 | 芸術工学部 環境設計学科 |
🔹 私立大学
| 大学名 | 学部・学科 |
|---|---|
| 早稲田大学 | 創造理工学部 建築学科 |
| 芝浦工業大学 | 建築学部 建築学科 |
| 東京理科大学 | 理工学部 建築学科 |
| 日本大学 | 理工学部 建築学科/生産工学部 建築工学科 |
| 武蔵野美術大学 | 造形学部 建築学科(デザイン志向) |
| 神戸芸術工科大学 | 建築・環境デザイン学科 |
大学によって、構造設計に強い・デザインに強い・都市計画に強いなど特色が異なります。
進学前に、自分が「構造派」なのか「デザイン派」なのかを意識して選ぶのがおすすめです。
◆ 建築士を目指す大学選びのポイント
- 建築士受験資格が取得できるカリキュラムか確認
→ 「指定科目履修」に対応しているかが重要。 - 実習・設計演習が充実しているか
→ 模型制作・CAD実習・卒業設計などで実践的な力を磨ける大学を選びましょう。 - 一級建築士の合格実績
→ 学内に「建築士資格支援講座」や「一級建築士学科対策ゼミ」などがあると有利。 - 卒業後の進路サポート
→ ゼネコン・設計事務所・公務員など、進路の幅が広い大学がおすすめ。
◆ 建築士になるまでのステップまとめ
| ステップ | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| ① 建築学科へ進学 | 基礎・設計・法規・構造を学ぶ | 4年 |
| ② 実務経験を積む | 設計事務所・建設会社などで | 2〜3年 |
| ③ 建築士試験を受験 | 学科試験+製図試験 | 毎年7〜10月 |
| ④ 登録・免許取得 | 都道府県知事または国交省に登録 | 数週間〜1か月 |
| ⑤ 建築士として就職・独立 | 設計・監理・開発などで活躍 | – |
最短ルートでは、大学4年+実務2年=6年で一級建築士取得可能です。
◆ 建築士を目指すなら大学?専門学校?
| 比較項目 | 大学 | 専門学校 |
|---|---|---|
| 学習内容 | 理論+実践(幅広い) | 実務重視・短期間 |
| 取得可能資格 | 一級・二級両対応 | 二級中心(3年制なら一級も) |
| 学費 | 4年間で約500〜700万円 | 2〜3年間で約300〜500万円 |
| メリット | 総合力・就職幅が広い | 実践力・早期就職可能 |
| デメリット | 実務経験が必要 | 一級受験には時間がかかる |
将来的に「設計事務所で活躍したい」「大規模プロジェクトに関わりたい」なら大学進学、
「すぐ現場で働きたい」「地元の工務店で活躍したい」なら専門学校がおすすめです。
◆ まとめ:大学での学びが建築士の第一歩
- 建築士を目指すなら 建築学科のある大学・専門学校 へ
- 二級建築士は学歴があればすぐ受験可能
- 一級建築士は大学卒業+2年の実務経験が必要
- 大学選びは「指定科目」「実習環境」「合格実績」を重視
建築士は、デザイン・技術・法律・環境すべてを理解する総合職です。
大学での4年間は、将来の建築家としての基盤をつくる大切な時間になります。

