南鳥島レアアースの採掘はいつ?試験〜商業化の目安と日本への影響を“期待しすぎず”整理
「南鳥島にレアアースがあるなら、もう日本は資源大国?」と思った直後に「でも採掘はいつ?」で手が止まる——ここが一番の分かれ道です。深海資源は、見つかった瞬間に工場へ届くタイプの話ではありません。2026-02-02の今日、南鳥島周辺のレアアース泥について、試験採掘がどこまで進み、いつ“供給”に近づくのか、日本に何が起きうるのかを、現実ラインでまとめます。
結論:2026年に試掘(テスト)→2027年ごろに回収能力の実証→商業化は「2030年前後」が目安として語られやすい
まずスケジュール感の結論です。報道では、南鳥島周辺の深海底からレアアース泥を回収する試験が2026年に実施され、成功すれば2027年に1日あたり約350トン規模の回収を目指す実証段階へ進む構想が示されています。その先、商業化は2030年前後を目標として語られることがあります。
ここで、よくある勘違いに釘を刺しておきます。
勘違い:「採掘=レアアースがそのまま国内に供給される」
現実:深海から回収するのは“泥”。そこから分離・精製・製錬を経て、ようやく材料として使える形になります。採掘より先に、供給網(サプライチェーン)づくりが勝負です。
参考:試験採掘の報道(Reuters)Japan to begin test mining rare-earth mud…/JAMSTECのSIP関連発表南鳥島EEZ海域でのレアアース泥採鉱システム接続試験
ここだけ覚えればOK
- 2026年は試掘(テスト)の年として位置づけられやすい
- 2027年ごろに“回収能力(例:1日350トン)”の実証へ進む構想がある
- 商業化は2030年前後が目安として語られやすいが、技術・環境・コスト次第
いつから始まった話?2013発見→2018資源分布可視化→2025〜2026で「回収の実運用」へ
「採掘いつ?」を理解するには、前段の積み上げを見た方が早いです。南鳥島のレアアース泥は、発見(2013)からいきなり採掘へ行ったわけではなく、分布の把握、回収機器、環境モニタリング、分離・精製まで、研究と実証の階段を上ってきました。
たとえば研究面では、2018年に南鳥島EEZ南部海域の資源分布を可視化し、有望エリアで1,600万トン超(酸化物換算)といった推計が示されています。技術面では、2025年末にJAMSTECが、レアアース泥の採鉱システム接続試験に関する発表を出しており、現場を動かすための“機器・運用”が具体段階に入っていることが読み取れます。
| 年 | 主な出来事 | 意味(何が進んだ?) | 確認先の例 |
|---|---|---|---|
| 2013 | 南鳥島沖で高濃度レアアース泥の発見が公表 | 「ある」ことが分かった段階 | 東京大学(2013) |
| 2018 | 資源分布の可視化・資源量推計、濃縮(選鉱)手法の研究 | 「どこに、どれくらい」を具体化 | 東京大学(2018) |
| 2025 | 採鉱システム接続試験など、実証に向けた機器・運用の前進 | 「回収できるか」を現場で詰める段階 | JAMSTEC(2025) |
| 2026 | 試掘(テスト回収) | 深海6,000m級での回収を実際に行い、泥を分析へ | Reuters |
| 2027 | 回収能力を上げた実証(例:1日350トン規模)を目指す構想 | 「継続的に取れるか」を試す段階 | Reuters |
この年表の見方はシンプルです。「地質(ある)→分布(どこ)→回収(取れる)→分離・精製(使える)→商業(回る)」の順番で、1つずつ壁を超えている途中、ということ。
判断の目安
- 2013は発見、2018は分布と資源量推計、2025〜2026は“回収の実運用”へ寄ってきた
- 深海資源は「見つかった」からが長い。段階を踏むのが普通
- 次の注目点は、回収量だけでなく“分離・精製までつながるか”
採掘(回収)が難しい理由:深海6,000mは「掘る」より「持ち上げる」が本丸
南鳥島のレアアース泥が夢の資源に見える一方、実現が簡単じゃない理由は明確です。深海6,000m級は、街のビルで言えば“超高層”どころじゃなく、地球の別レイヤー。現場の課題は「掘る」より先に「安定して持ち上げる」ことに集中します。
課題1:回収の安定性(パイプで吸い上げるだけ、では終わらない)
報道では、探査船の設備を使いパイプで泥を回収し、本土へ運んで分析する、とされています。ここで重要なのは、単発で回収できるかではなく、悪天候や運用制約の中で“繰り返し”回収できるか。深海作業は、1回のトラブルが全体スケジュールを押し下げる世界です。
課題2:分離・精製・製錬(ここが無いと「資源がある」で終わる)
レアアースは“泥から取り出して終わり”ではなく、元素ごとに分け、工業的に使える純度にし、サプライチェーンに乗せる必要があります。つまり、採掘(回収)だけ進んでも、国内の加工工程が弱いと結局海外頼みになりやすい。ここが経済安全保障の核心でもあります。
課題3:環境モニタリング(社会実装の必須条件)
深海底の攪乱は、生態系への影響が懸念されます。だからこそ、採鉱だけでなく環境モニタリング技術の整備がセットで進められています。結局、社会が納得できる形で“やれるか”が最後の関門になります。
| 壁 | 何が難しい? | 突破できたと判断しやすいサイン | よくある勘違い |
|---|---|---|---|
| 回収(採鉱) | 深海6,000mで安定運用 | 複数回の回収成功と、設備トラブル時の復旧実績 | 「一度取れた=もう余裕」 |
| 分離・精製 | 元素ごとに分ける工程が複雑 | 回収泥からの分離・精製の歩留まりが示される | 「泥を運べば完成品が出る」 |
| 環境 | 深海生態系への影響評価 | モニタリング結果と管理計画が公表される | 「海は広いから影響はゼロ」 |
| コスト | 深海作業は高コストになりやすい | “商業として回る”試算が現実味を帯びる | 「埋蔵量が大きい=儲かる」 |
ここだけ覚えればOK
- 深海資源は「採れるか」より「持ち上げて回し続けられるか」が本丸
- 採掘だけでなく、分離・精製・製錬が揃って初めて供給になる
- 環境モニタリングは“おまけ”ではなく、実装の必須条件
日本への影響:レアアース供給の不安を減らす“カード”になり得るが、万能薬ではない
南鳥島のレアアース泥が注目される最大の理由は、レアアースがEVモーター用磁石(ネオジム、ジスプロシウムなど)、風力発電、ロボット、医療・電子材料など、現代の基幹産業に直結しているからです。供給が偏ると、企業の調達・コスト・生産計画が揺れます。
一方で「南鳥島があれば全部解決」と言い切れないのも事実です。深海回収のコスト、分離・精製の設備、人材、環境対応、国際ルールなどが絡み、供給に乗るまで時間がかかる可能性がある。だからこそ、影響は“短期でドカン”というより、“中長期で効いてくる”タイプになりやすいです。
産業別に見ると、影響の出方が違う
| 分野 | レアアースが効く場面 | 南鳥島開発が進んだ場合の期待 | 現実的な注意点 |
|---|---|---|---|
| 自動車(EV/HEV) | 高性能磁石(モーター) | 調達の多様化、供給リスクの低減 | 素材調達だけでなく加工工程の整備が必要 |
| 風力・電力設備 | 発電機・磁石材料 | 長期案件の調達安定に寄与 | 価格が下がるとは限らない(コスト次第) |
| ロボット・FA | モーター・センサー材料 | 供給途絶リスクの緩和 | 必要量は用途で差が大きい |
| 電子・医療材料 | 特殊材料(テルビウム等) | 特定元素の確保がしやすくなる可能性 | 元素ごとの分離が難しいほどボトルネックになりやすい |
なお、対外関係としては、日米で南鳥島周辺の開発を検討する動きが報じられたこともあり、資源開発が外交・安全保障と結びつきやすいテーマであることが分かります(報道:Reuters)。
判断の目安
- 南鳥島は、供給リスクを減らす“カード”になり得るが、万能薬ではない
- 効くのは中長期になりやすい(回収・加工・環境対応の積み上げが必要)
- 産業別に影響の出方が違うので、「自分の関心分野」で見ると理解が早い
これから何を見ればいい?「期待して待つ」より「3つの指標」で追うと判断しやすい
ニュースはどうしても「国産レアアースの切り札!」みたいなテンションになりがちです。でも、追うべきポイントはもっと地味で、しかも分かりやすい。次の3つだけ見ておけば、踊らされにくくなります。
指標1:回収の“継続性”と“規模”
単発成功より、何度も安定して回収できるか。回収量が増えても、トラブルで止まるなら商業化は遠いです。
指標2:分離・精製までの“歩留まり”
泥からどれだけ有用元素を取り出せるか。ここが見え始めると、供給の現実味が上がります。
指標3:環境モニタリングと社会的合意
深海の環境影響は、後から揉めると全部が止まります。最初から監視・評価・対策をどう設計するかが、実は最重要級です。
ここだけ覚えればOK
- 追うべきは「回収の継続性」「分離・精製の歩留まり」「環境モニタリング」の3つ
- 大きい見出しより、地味な進捗の積み上げが商業化の条件
- “採掘いつ?”は、実は“供給網いつ?”の言い換えだと理解すると迷わない

