下請法改正はいつから?施行日と「結局どこが変わるの?」要点まとめ
「下請法、改正って聞いたけど…結局いつから?何を直せばいい?」——このモヤモヤ、経理・購買・営業が同時に抱えがちです。しかも年末年始は請求と支払いで手一杯。調べる気力が残らない。
この記事は2026-01-06時点で、下請法改正の施行日と変更点の要点を、“現場でやること”に翻訳してまとめます。
法律の言い回しは難しく見えますが、やるべきことは意外とシンプル。順番に整理しましょう。
結論:施行は2026年1月1日。一部は公布日から動いている
まず一番大事なところ。今回の改正は、2026年1月1日から本格施行です。年明け一発目から、ルールの“呼び方”も“範囲”も変わります。
ただし注意点がひとつ。法律全体が同じタイミングで一斉に動くとは限らず、改正内容の中には公布日から施行される規定がある(=準備を待ってくれない部分がある)とされています。実務感覚では「2025年のうちに点検を始めておくのが安全」と捉えるのが現実的です。
そして見落としがちな変更が、法律の“呼び名”。従来「下請法」と呼ばれていた枠組みは、改正により中小受託取引適正化法(通称:取適法)という呼称が前面に出てきます。会議で「下請法の件」と言っても通じますが、社内文書や研修資料は“新しい言葉”に合わせたほうが混乱が減ります。
- 本格施行は2026年1月1日:年明けから前提が変わる
- 一部は公布日から施行の規定あり:先延ばしにしないのが吉
- 呼び名が「取適法」へ:社内用語も更新すると会話が早い
改正の全体像:ポイントは「対象が広がる」+「価格交渉」+「支払手段」
改正点を全部追うと、情報量で疲れます。なので、重要度が高い順にまとめます。
今回の骨格は大きく4つです。
①用語・名称の変更(下請→委託/受託へ)、②適用対象の拡大(資本金だけでなく従業員規模も見る、運送も入る)、③禁止行為の追加(価格協議を無視して一方的に決めるのがNG)、④支払手段の見直し(手形などがアウト方向へ)。
よくある誤解にツッコミを入れると、「これまで真面目にやってきたから関係ない」は危ないです。真面目な会社ほど、昔からの商慣習(“慣れた支払方法”“いつもの単価据え置き”)が残っていて、そこに改正が刺さることがあります。
| 改正ポイント | 何が変わる?(ざっくり) | 現場で最初にやること | 落とし穴 |
|---|---|---|---|
| 対象の拡大 | 資本金だけでなく従業員規模も見て、規制対象が増える | 自社と取引先が対象に入るか棚卸し | 「資本金小さいから対象外」の思い込み |
| 価格交渉の新ルール | 協議に応じない・説明しないまま代金を決める行為がNG方向に | 価格協議のフロー(誰が、いつ、何を説明)を決める | メール無視・電話だけで済ませる“記録が残らない運用” |
| 支払手段の見直し | 手形払い等が禁止方向へ。満額を得にくい支払手段もアウトに寄る | 支払条件と支払方法を契約・発注書で再点検 | 「うちは手形じゃなく電子だからOK」と雑に判断 |
| 書面・電子の扱い | 書面交付義務は電磁的方法(メール等)を使いやすくなる | 発注書テンプレを電子前提で整備 | 送って終わり(保存・検索できず監査で詰む) |
- 改正の軸は4つ:対象・交渉・支払・電子運用
- “真面目な昔ルール”が刺さりやすい:慣習の棚卸しが最優先
- 全部読まないでOK:実務はポイント型で回せる
適用対象が広がる:従業員基準が追加、運送委託も対象に
改正で一番「自分ごと化」しやすいのがここ。これまで下請法の適用は主に資本金で見られていましたが、改正では従業員数の基準が追加されます。
目安として、製造委託などは従業員300人、役務提供委託などは従業員100人を基準として設計されています。資本金が小さくても従業員が多い会社、あるいは減資で資本金を軽くした会社が“対象外に見えてしまう”問題に対応する狙いです。
もう一つの拡大が運送。従来は「運送の再委託」など限られた形で対象になりやすかったところ、改正で物品の引渡しに必要な運送の委託(特定運送委託)が対象に加わります。物流の現場で起きがちな“荷待ち・荷役の押し付け”の文脈をイメージすると、なぜ入ってきたかが分かりやすいです。
さらに細かいけれど効く変更として、製造委託の対象物品に「金型以外の型等」が追加されます。「金型は対象って聞いたけど、治具(じぐ)や型はどうなの?」のグレーが少し整理される方向です。
そして地味に助かるのが、書面交付義務をメール等の電磁的方法で行いやすくする話。承諾の有無にかかわらず電磁的方法が可能になる方向なので、“紙の発注書を押印して郵送”の手間が減る可能性があります。とはいえ、電子化は「送れる」だけじゃ足りません。「後で探せる・消えない・証拠になる」までセットです。
- 従業員基準が追加:資本金だけでは判断できなくなる
- 運送委託が対象に入りやすくなる:物流取引の慣習も点検
- 電子発注が進めやすい:ただし保存・検索まで設計する
禁止行為が追加:価格協議を無視して一方的に決めるのが危ない
今回の改正で、現場が一番ヒヤッとしやすいのが価格協議(価格交渉)の扱いです。
よくあるシーンを想像してください。
原材料や人件費が上がって、受託側(中小側)が「単価見直しお願いしたいです」と言う。ところが委託側(発注側)が「今期は据え置きで。うちも厳しいから」で終了。協議は実質ゼロ。説明も薄い。——これ、これまで“よくある話”として流れていた場面が、改正ではかなり危うくなります。
改正では、価格協議の求めがあったのに協議に応じない、あるいは必要な説明をしないなどの形で、一方的に代金を決めて相手の利益を不当に害する行為が、禁止行為として新設される方向です。要するに「単価そのもの」だけでなく「交渉プロセス」を見られるイメージ。
ここで勘違いしがちなのが、「じゃあ値上げ要求は全部飲まなきゃダメ?」という不安。そこまで単純ではありません。“協議して、説明して、納得できるプロセスを踏む”ことが核です。値上げができない事情があるなら、その事情を言語化して、代替案(仕様調整・納期調整・分割改定など)を提示する。ここまでやると“対等な交渉”に近づきます。
支払手段の見直し:手形だけじゃない、「満額を得にくい支払」も要注意
もう一つの大きな変更が支払。改正では手形払いが禁止方向になります。さらに、電子記録債権などの支払手段でも、支払期日までに代金相当額を満額で得ることが困難なものは認めない方向の整理です。
現場の言葉にすると、「受託側が“現金化の負担(手数料や手続き)”を背負う設計は、そろそろ終わらせよう」というメッセージに近いです。
- 単価ではなく“交渉の仕方”が問われる:無視・放置は危険
- 値上げを必ず飲む話ではない:協議・説明・代替案がカギ
- 支払手段は全面点検:手形だけでなく“満額を得にくい形”も警戒
面的執行の強化:業界主管省庁も動きやすくなるイメージ
最後に「取り締まり(執行)」の話。改正では、取引の実態に近い事業所管省庁が、指導・助言などを行いやすくする方向が入っています。
これ、現場感で言うと「公正取引委員会だけの話じゃなくなる」イメージです。業界を所管する省庁と連携して“面”で見る力を強める。つまり、特定企業だけでなく、業界慣習として問題が出ている領域にメスが入りやすくなります。
もう一つ、地味に重要なのが報復措置の扱い。相談や申告をした取引先に対して不利益を与えるようなことは当然NGですが、情報提供先が増えると、企業側は「相談されたときの社内対応」を整えておかないと事故ります。感情で「じゃあ取引やめる?」みたいな話が出ると、最悪の方向へ転びます。
- “面”で見られやすくなる:業界慣習レベルの是正が進みやすい
- 相談・申告への社内対応が重要:感情対応は火種
- コンプラは現場の運用で決まる:ルールだけ作っても足りない
施行前にやることチェック:まずは「対象判定」→「支払」→「価格交渉」の順
では結局、何から手を付けるべきか。おすすめの順番はこれです。
①対象判定:資本金+従業員数+取引類型(製造/修理/情報成果物/役務/運送)で、自社と主要取引先を棚卸し。
②支払条件の点検:手形、電子記録債権、ファクタリング等を含め、受託側が満額を期日までに得られる設計か確認。
③価格交渉フロー:協議依頼が来たときの受付、検討、回答、説明資料、合意・不合意の記録をテンプレ化。
ここまでやると、実務は急に楽になります。「何を守ればいいか」が見えてくるからです。
- 順番は3つ:対象判定→支払→価格交渉
- テンプレ化が勝ち:担当者の腕に依存しない設計へ
- “うちは大丈夫”を一回捨てる:慣習の棚卸しが最短ルート

