サブクレードK 感染力と世界拡大の原因|なぜここまで広がっているのか
時点で、インフルエンザA(H3N2)「サブクレードK」は、ECDCの評価で全大陸で検出され、2025年5〜11月のA(H3N2)配列の約3分の1を占めるまでに拡大しています。EU/EEAでは約半数がサブクレードKとされ、季節性インフルシーズンの主役になりつつあります。
世界でのサブクレードK拡大状況
各国の公表資料や報道を総合すると、サブクレードKは2025年南半球シーズン終盤に出現→北半球の2025/26シーズン序盤で急増という動きを見せています。
| 地域 | サブクレードKの状況(2025年11〜12月頃) |
|---|---|
| EU/EEA(欧州) | A(H3N2)配列の約半分がサブクレードK。通常より早いシーズン立ち上がりの一因とされ、「一般人口では中等度リスク、高リスク群では高リスク」と評価。 |
| 英国 | シーズン序盤に検出されたH3N2の多くがサブクレードK(J.2.4.1)で、早期から流行を牽引。 |
| 日本 | 2025年秋に全国的なインフルエンザ流行入りが宣言され、報道ベースでは「検出されたインフルA(H3N2)の多くがサブクレードK」とされる。 |
| 北米 | カナダ・米国でもサブクレードKが検出され、英国・日本と同様にシーズン序盤の流行ドライバーと見なされている。 |
この章の要点
- サブクレードKはすでに全大陸で検出され、A(H3N2)の中で主流クラスの位置づけになっている。
- 欧州・日本・カナダ・米国などで、今季の「早い流行立ち上がり」の主因と見られている。
- リスク評価では、一般人口に対しては「中等度」、高齢者などハイリスク群には「高い」リスクとされる。
サブクレードKの感染力が強いと言われる理由
現時点で「厳密な感染力(基本再生産数R0)」が精密に計算されているわけではありませんが、各種レポートから他のH3N2よりも広がりやすいと見なされる背景がいくつか示されています。
| 要因 | 内容 | 感染拡大への影響 |
|---|---|---|
| ウイルス側の変異(抗原ドリフト) | サブクレードKは、2025/26シーズンのワクチン株とは異なる複数の変異を持ち、免疫から部分的に逃れやすいとされる。 | 過去の感染やワクチンで得た免疫が効きにくくなり、「かかる人」が増えやすい。 |
| 既存免疫の弱さ | パンデミック後の数年間でH3N2に触れる機会が少なかった若年層では、H3N2全般に対する免疫が低い可能性がある。 | 特に子どもや若年成人で感染が広がりやすく、その後高齢者に波が及ぶ。 |
| ワクチン接種率の低下 | 英国・スコットランド・北米などで、ここ数年インフルワクチン接種率が低下していると報告。 | 「ミスマッチ+接種率低下」が重なり、シーズン全体の防波堤が弱くなる。 |
| 人の行動の変化 | マスク・換気・在宅勤務などの感染対策が、コロナ流行初期よりかなり緩んでいる。 | 冬場の人混み・イベント・旅行などでウイルスが動きやすい環境が戻っている。 |
この章の要点
- サブクレードKは、複数の変異により「既存の免疫から一部逃げる」性質(抗原ドリフト)を持つと評価されている。
- H3N2への免疫が弱い若年層+低いワクチン接種率が、世界的な拡大を後押ししている。
- マスク・換気などの生活防衛策が全体として弱くなっていることも、広がりやすさに関与している可能性が高い。
ワクチンとの「ミスマッチ」と感染拡大
サブクレードKは、2025/26シーズンのワクチン株が選ばれた後に台頭したため、「ワクチンと合っていないのでは?」という懸念が広がりました。実際、各国の抗原性解析でもワクチン株との反応性低下が報告されています。
一方で、GaviやECDCなどの分析では、
- 感染予防効果は低下している可能性がある
- しかし重症化や入院の予防効果は一定程度残っている
- ワクチン接種率が上がるほど、シーズン全体のインパクトを和らげられる
とまとめられており、「ミスマッチだから打っても無意味」というわけではないと強調されています。
この章の要点
- サブクレードKは今季ワクチン株とのミスマッチが指摘されているが、重症化予防の意味は残っている。
- 「かかる人」は増えやすい一方で、「重くなりにくくする」効果にはまだ期待できる。
- ワクチン+基本的な感染対策の両方を組み合わせることが、拡大の影響を減らす現実的な方法。
サブクレードKの世界拡大と今後のシナリオ
ECDCなどのリスク評価では、サブクレードK支配のシーズンを「一般人口には中等度、ハイリスク群には高いリスク」と位置づけつつ、今後の展開についていくつかのシナリオが想定されています。
| シナリオ | 世界的なイメージ | ポイント |
|---|---|---|
| ① 中等度〜やや厳しいシーズン | 感染者数・入院はここ数年よりやや多いが、医療逼迫は局所的。 | ワクチン接種や基本的な対策がある程度機能し、ピークは抑えられる。 |
| ② 厳しいピークシーズン | ワクチン接種率の低さとミスマッチが重なり、国・地域により病床逼迫。 | 特に高齢者・子どもの入院が増え、医療体制が厳しくなる可能性。 |
| ③ 早く立ち上がり早めに収束 | ピークは高めだが短期間で、春先の波は小さめ。 | 流行時期が前倒しになる代わりに、シーズン全体の負荷は抑えられる可能性もある。 |
この章の要点
- サブクレードKの世界拡大は続いているが、最終的なインパクトはまだ「未確定」。
- ワクチン接種率・人々の行動・医療体制など、人間側の要因でシーズンの重さが変わる。
- 個人レベルでは「予防+早めの受診」で、自分と周囲のリスクを下げることができる。

