社内不正が発覚したらどうする？2025年版・初動対応と再発防止ガイド
社内の横領・不正会計・ハラスメント隠蔽などの「社内不正」は、どの企業にも起こり得る重大リスクです。2025-12-01時点では、内部通報制度や改正公益通報者保護法の運用も進み、発覚後の対応の良し悪しが企業価値に直結すると言われています。本記事では、社内不正が発覚した「その瞬間」から経営陣が取るべきステップを、実務の流れに沿って整理します。
社内不正発覚時にまず押さえるべき全体フロー
目的は「損失と信用棄損を最小化し、秩序を回復する」こと
不祥事対応の目的は、「乱れた企業秩序を修復しつつ、損失・信用棄損を最小化し、信頼回復を図ること」と整理されています。そのためには、感情的に動かず、次のようなフェーズで対応を設計するのが基本です。
| フェーズ | 目的 | 主なアクション | 関わる主体 |
|---|---|---|---|
| 1. 初動対応 | 被害拡大防止と証拠保全 | 疑い情報の確認、関係システムや取引の一時停止、ログ・資料保全 | 現場責任者、法務・コンプラ、情報システム |
| 2. 事実調査 | 事案の全体像の把握 | 調査チーム編成、ヒアリング、会計・データ分析、必要に応じ第三者委員会 | 経営陣、内部監査、外部専門家 |
| 3. 社外説明・当局対応 | 利害関係者への誠実な説明 | 顧客・取引先・金融機関・監督官庁・メディアへの説明 | 代表者、広報、IR、法務 |
| 4. 是正・再発防止 | 同種不正の再発防止 | 規程改定、体制見直し、教育・処分、内部通報制度の強化 | 経営陣、各部門責任者、コンプラ部門 |
- 最初に「何をゴールとする対応か（損失・信用棄損の最小化）」を経営陣で共有する
- 感情的な犯人探しや隠蔽ではなく、フェーズごとの目的と役割分担を明確にする
- 事案の性質に応じて、専門家や第三者委員会の活用も早い段階で検討する
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最初の24〜48時間で必ずやるべき「初動対応」
被害拡大防止・証拠保全・情報管理の3本柱
企業不祥事の実務では、初動対応がその後の信頼回復の成否を大きく左右するとされています。初動は次の3点に絞って、スピーディかつ冷静に動くことが重要です。
| 初動の柱 | 具体的な行動 | やってはいけないこと | ポイント |
|---|---|---|---|
| 被害拡大防止 | 問題取引の一時停止、不正が疑われるシステムへのアクセス制限、関連商品の出荷停止など | 「様子を見る」と先送りして被害を拡大させる | 疑い段階でも暫定措置を取り、後で必要に応じて解除する発想を持つ |
| 証拠保全 | メール・チャット・ログ・会計データ・紙資料のバックアップ、削除・改ざん禁止の通知 | 関係者が「気を利かせて」メールやログを削除することを容認する | 後の調査・訴訟・当局対応で、証拠の有無が決定的になる |
| 情報管理 | 対応メンバーの限定、対外コメント窓口の一本化、社内向け一次連絡 | 担当者ごとにバラバラに説明・謝罪をしてしまう | 「分かっていないこと」は分かっていないと整理して伝える姿勢が重要 |
- 初動は「止める・残す・一本化する」の3点だけに集中する
- 削除・持ち出しを防ぐため、全関連者に証拠保全の重要性を即時周知する
- コメント窓口を一本化し、「現時点で判明している範囲」を整理して共有する
事実調査の進め方と調査体制の組み立て
社内調査・外部専門家・第三者委員会の使い分け
不正の規模や性質に応じて、社内調査で足りるケースと、外部専門家や第三者委員会が必要なケースがあります。近年の事例や専門家解説では、「重大性・経営関与の有無・社会的影響」の3軸で調査体制を判断することが提案されています。
| 調査体制 | 向いているケース | メリット | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 社内調査チーム | 金額・範囲が限定的で、経営層の関与がないと見込まれる不正 | 現場実態に詳しく、スピードが出やすい | 「身内調査」と見られないよう、客観性を意識する |
| 外部専門家（弁護士・会計専門家等） | 法令違反や会計不正が疑われるケース、当局対応が想定されるケース | 法的観点や会計専門性に基づく調査と助言が得られる | 調査範囲・スケジュール・報告方法を事前に明確化する |
| 第三者委員会 | 上場企業の重大不正、経営陣関与の疑いがある事案 | 高い客観性と説明責任を果たしやすい | 委員構成・独立性・調査権限の設計を慎重に行う |
- 「規模」「経営関与」「社会的影響」の3軸で、調査体制を早期に判断する
- 調査の目的（原因究明・責任の所在・再発防止策）を最初に明文化する
- 調査結果は、再発防止策とセットで社内外に共有する前提でまとめる
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社外説明・当局対応・メディア対応の基本
ステークホルダーへの誠実な情報開示と時間軸の設計
会計不正や重大不祥事では、証券取引所や監督官庁からの行政処分、改善報告書の提出要請なども生じ得ます。同時に、顧客や取引先、金融機関、従業員など、多様なステークホルダーへの説明も欠かせません。
| 対象 | 伝えるべき内容 | タイミング | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 監督官庁・取引所 | 事実関係、法令違反の有無、是正・再発防止策 | 報告期限や指示に従いながら、早期の相談を心掛ける | 事実を隠したり、楽観的に見積もったりしない |
| 顧客・取引先 | 影響の有無、取引への支障、補償・代替策 | 影響が見込まれる場合は、調査中でも一次連絡を行う | 「当社には関係ない」と切り捨てない姿勢が信頼回復につながる |
| 従業員 | 事案の概要、会社の方針、守秘義務・通報窓口 | 社外公表と同じか、それより少し前のタイミング | 噂話だけが先行しないよう、経営からメッセージを出す |
| メディア・一般 | 事実関係、影響範囲、謝罪、再発防止策 | 一次声明→詳細説明→フォロー説明の順で段階的に | 推測で発言せず、「現時点で判明している範囲」を整理して伝える |
- 説明の順番とタイミング（従業員・顧客・当局・メディア）をあらかじめ設計しておく
- 一次声明では「事実」「影響」「今後の調査と対応方針」を簡潔にまとめる
- 再発防止策は、責任部署・期限・指標を含めて具体的に示す
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再発防止と「社内不正が起きにくい仕組み」づくり
ガバナンス・内部通報制度・教育を2025年仕様にアップデート
近年の調査では、不正発覚経路の第1位は「内部通報」であり、改正公益通報者保護法に基づく内部通報制度の整備が進んでいます。また、不正発覚後の対応として、ガバナンス強化・内部統制の見直し・コンプライアンス意識改革が重視されています。
| 施策分野 | 具体的な取り組み例 | 2025年時点のポイント | チェック項目 |
|---|---|---|---|
| ガバナンス・内部統制 | 権限規程の見直し、職務分掌の明確化、ダブルチェックの導入 | 取締役会・監査役会へのリスク報告ルートの明確化 | 「悪いニュース」が経営に届く仕組みになっているか |
| 内部通報制度 | 社内・社外窓口の整備、匿名通報、報復禁止の徹底 | 改正公益通報者保護法に沿った体制整備と通報者保護 | 従業員が制度を知り、安心して利用できるか |
| コンプライアンス教育 | 不正事例を使ったケーススタディ研修、eラーニング | ハラスメント・情報漏えい・SNS・会計不正など重点領域の強化 | 年1回以上、階層別・テーマ別に実施できているか |
| 評価・処分 | 不正行為への適切な懲戒、コンプラ配慮を評価に反映 | 「違反してまで数字はいらない」という方針を評価制度に反映 | 短期業績偏重が不正のインセンティブになっていないか |
- 不正発覚を「終わった事件」とせず、体制や文化を変えるきっかけにする
- 内部通報制度を実効的に運用し、通報者保護と早期発見を両立させる
- 事例ベースの研修と評価制度見直しで、現場の行動変容につなげる
