診療報酬改定2026の医療機関への影響:どこが伸びて、どこが苦しくなる?実務目線で読む
「プラス改定って聞いたのに、うちはなぜ苦しい?」「届出と記録が増えるだけでは…」——改定のたびに現場の体感とニュースがズレるのは、ある意味いつものことです。2026-01-26(Asia/Tokyo)時点で示されている資料から見ると、2026改定は物価・賃上げ対応を前面に出しつつ、機能分化・連携、医療DX、適正化を同時に進める設計です。つまり、「原資は増やすが、やり方も変える」。この記事では、病院・診療所・薬局それぞれが“どこで影響を受けるか”を、できるだけ具体に寄せて整理します。
影響の全体像:2026改定は「配分のメリハリ」と「実効性チェック」が強まる
“もらえるか”だけでなく“使ったか”まで見られる時代へ
改定率に関する資料では、診療報酬のプラス改定の方向性が示され、内訳として賃上げ分や物価対応分、さらに食費・光熱水費などの論点が整理されています。現場的に効くのは、この2点です。
① 配分のメリハリ:施設類型(病院/診療所/歯科/薬局)や、病院の中でも機能によって配分の考え方が変わり得る。つまり「全員が同じだけ上がる」ではありません。
② 実効性チェック:賃上げ目的で措置するなら、実際に賃上げに回ったかを把握する仕組みを強める、という発想が前に出ています。これ、現場の感覚で言うと「点数を取るなら、根拠(給与・運用)も整えてね」という話です。
- ここだけ覚えればOK: 2026改定は「配分が割れる」「実効性が問われる」。両方を前提に読む。
- 判断の目安: 自院が“どの機能として評価されたいか”を決めないと、改定対応が散らかる。
- よくある誤解へのツッコミ: 「プラス改定=現場が勝手に楽になる」→要件と運用が変わり、やることも増える。
病院への影響:入院評価は「機能」と「プロセス・アウトカム」に寄る
人員配置だけで語れない時代。記録と連携が“点数の土台”になる
基本方針では、2040を見据えた機能分化・連携が大きな柱です。入院医療は「患者の状態と必要機能に応じた評価」へ寄せる方向性が明確で、急性期〜回復期〜慢性期、そして在宅への橋渡しまでを、地域でどう回すかが問われます。
ここで病院が受けやすい影響は3つあります。
(1)退院支援・入退院調整の重み増:円滑な入退院、後方支援(緊急入院等)などが方向性として示されているため、カンファの実施だけでなく、誰が何を確認し、どう連携したかの“見える化”が重要になります。
(2)リハ・栄養・口腔の統合的ケア:高齢者の生活を支えるケアの推進が明記され、リハ・栄養・口腔管理を「セットで回す」動きが強まります。現場あるあるで言うと「栄養は栄養、口腔は口腔で別運用」になりがち。ここを統合できると、改定対応が“加点取り”から“ケアの改善”に変わります。
(3)働き方改革とタスクシフト:人手不足の中で持続可能な働き方を確保するため、ICT・AI等の活用やタスクシフトが、点数や基準設計に絡みやすくなります。「人を増やせないなら、回し方を変える」圧がかかるイメージです。
| 病院で影響が出やすい領域 | 改定で起こりがちな変化 | 現場の“詰まりポイント” | 先に手を打つなら |
|---|---|---|---|
| 入退院支援・地域連携 | 評価の比重が上がる/要件が具体化 | 記録がバラバラ、情報共有が遅い | 連携テンプレ(紹介・逆紹介・退院サマリ)を標準化 |
| リハ・栄養・口腔 | 統合ケアの推進 | 職種間の情報がつながらない | 多職種カンファの最低項目を統一(ADL/栄養/口腔) |
| 医療DX・データ提出 | 体制整備の評価、データ活用の重視 | ベンダー任せで運用が回らない | 「入力→確認→活用」までの院内ルールを決める |
| 処遇改善・賃上げ | 原資の配分+実効性の確認 | 給与体系が複雑で説明できない | 職種別に“賃上げ反映”の説明資料を作る |
- ここだけ覚えればOK: 病院は「機能」「連携」「記録」が評価の土台。入院だけで完結しない。
- 判断の目安: 退院支援・リハ栄養口腔・DXのどれかが弱いなら、そこが改定の影響点になりやすい。
- 実際どうする人が多いか: まず“書式の統一”から着手し、運用が回ってから加点を狙う。
診療所への影響:外来の機能分化と「かかりつけ機能」がより前面に出る
患者さんは「紹介状」より「安心」を求める。そこを制度がどう支えるか
基本方針では、かかりつけ医機能の評価や外来医療の機能分化と連携が具体的方向性として示されています。言い換えると、診療所は「何でも屋」から「地域の窓口・継続管理」の役割がより強調されます。
現場のシーンで言うと、こんな感じです。発熱や慢性疾患の管理で患者数は多い。紹介状を書く時間はない。でも、病院側は逆紹介を進めたい。患者さんは「大病院が安心」と思っている。——ここを、制度として“連携が回るように”誘導していきます。
また、医師偏在対策が議論として位置づけられている点も見逃せません。地域によっては、診療所の開業・配置と診療報酬上の扱いが論点になり得ます。「うちは関係ない」と言い切れないのが、ちょっと嫌なところです。
- ここだけ覚えればOK: 診療所は「継続管理」「紹介・逆紹介」「地域連携」がカギになりやすい。
- 判断の目安: 連携先病院との“情報共有の型”があるか(紹介状テンプレ、検査共有、フォロー計画)。
- よくある誤解へのツッコミ: 「連携=紹介状を書くこと」→患者説明、フォロー、再紹介の設計までが連携。
薬局・調剤への影響:適正化と対人業務、電子処方箋の“使いこなし”が焦点
残薬・重複投薬は「気づける仕組み」を作った所が強い
効率化・適正化の柱では、後発医薬品の使用促進、重複投薬・ポリファーマシー・残薬、長期処方・リフィルなどが並びます。ここで薬局が影響を受けるのは、単に「削られる/増える」ではなく、対人業務(服薬フォロー、医師との連携、適正使用)をどう評価するか、という設計です。
そして医療DXの観点では、電子処方箋を含むICT連携の活用が方向性として示されています。よくある勘違いは「導入さえすればOK」。実際は、重複投薬チェックをどう運用に落とすか、疑義照会や情報共有を誰が・いつ・どこまでやるかが本番です。
薬局側の“現実寄りの勝ち筋”は、レセコンやシステムの話よりも先に、服薬情報の取り方・記録の型・医師への返し方を標準化すること。ここが整うと、制度が変わっても振り回されにくくなります。
- ここだけ覚えればOK: 調剤は「適正化」と「対人業務」、そして電子処方箋の活用が焦点。
- 判断の目安: 重複投薬・残薬・長期処方の“対応フロー”が紙1枚で説明できるか。
- 実際どうする人が多いか: システム導入より先に、疑義照会の基準と記録様式を整える。
“改定で損しない”ための実務チェック:今からできる5つの準備
結局、最後に勝つのは「誰が見ても回せる運用」を作った所
改定は、情報収集ゲームに見えて、実は運用ゲームです。忙しい現場ほど「分かる人が回す」になりがちですが、改定のたびにそれだと燃え尽きます。ここでは、施設類型を問わず効く準備を5つに絞ります。
- 自院の柱を1〜2個に絞る: 外来中心/在宅強化/入院の機能転換など、改定で伸ばす場所を決める。
- 人件費・物件費の増分を“項目別”に出す: 賃上げ・委託費・光熱費など、痛点を数字で共有する。
- 連携書式を統一する: 紹介状、退院サマリ、服薬情報提供のテンプレを揃える(これだけで事故が減る)。
- DXは「入力→確認→活用」を一気通貫で設計: 導入したのに使われない、を防ぐ。
- 届出候補を先に棚卸し: “取れそうな加算”ではなく“回せる加算”だけ残す(欲張ると崩壊する)。
- ここだけ覚えればOK: 改定対応は「運用の標準化」が最強。分かる人依存を減らす。
- 判断の目安: 1つの点数に対して「誰が・いつ・何を記録するか」が言えないなら、先に運用設計。
- よくある誤解へのツッコミ: 「全部取れば儲かる」→回らない加算は、監査リスクと疲弊が増えるだけ。

