診療報酬改定2026で医療機関はどう影響を受ける?勝ち筋は「加算の取り方」より“運用の作り直し”
「2026改定、うちは得?損?」「結局また事務だけ増えるやつ?」──改定のたびに現場がザワつくのは、点数よりも“運用が変わる”からです。掲示物、同意書、算定要件、電子化対応、院内の動線…地味に全部が刺さってきます。2026-02-12の今日、2026年度(令和8年度)診療報酬改定が医療機関に与える影響を、外来・入院・在宅・経営・人材の観点で整理します。
結論から言うと、2026改定は「賃上げ・物価」への配分色が濃い一方で、適正化(効率化)も同時に進める流れです。つまり、取れるところは取り、絞られるところは絞られる。そして差がつくのは、点数表の暗記ではなく「院内の運用を変えられるか」です。
1. 経営インパクトの全体像:プラス改定でも“黒字化”とは限らない
まず前提。2026改定は本体が+3%台とされ、ネットでもプラスという枠組みです。ここだけ見ると「経営は楽になる?」と思いたくなります。ところが現実は、賃上げ・光熱費・委託費・材料費の上昇が続くと、増えた分がそのまま利益になりません。
たとえば、病院は給食や委託、設備更新が重く、診療所は人件費の比率が高い。どちらも“物価と賃金”に追われます。改定がプラスでも「赤字が少し減っただけ」や「現状維持が精一杯」になりやすいのが、今回の読みどころです。
| 施設タイプ | 影響が出やすいコスト | 2026改定で見ておくポイント |
|---|---|---|
| 病院(入院比率高) | 光熱費、給食、委託、材料、人件費 | 入院基本料・評価料の上げ幅と、算定要件の変更 |
| 診療所(外来中心) | 人件費(受付・看護)、家賃、IT費用 | 初再診・管理料・物価対応評価の入り方 |
| 在宅・訪問に強い | 移動・人件費、24時間体制、連携コスト | 評価の強化と“不適切の是正”の両にらみ |
- ここだけ覚えればOK
- プラス改定=黒字化ではない。コスト増が同時に走る。
- 自院のコスト構造(人件費型か物件費型か)で受け止め方が変わる。
- 影響は「点数」だけでなく「要件の変更」で大きく出る。
2. 外来の影響:初再診だけでなく“評価料の組み合わせ”で差がつく
外来は、患者数が多いほど点数の小さな差が積み上がります。たとえば再診料が1点動くだけでも、1日100人の再診があるなら、月に数万円、年に十万円単位で効いてきます(数字はあくまで件数次第)。
ただし、外来の本丸は「管理料・加算・連携」の設計です。慢性疾患の管理、医療DX、重複投薬や長期処方の適正化など、運用で点数と監査リスクが同時に動きます。ここでありがちな失敗が、「加算を増やそうとして院内がパンクする」こと。現場は忙しいので、加算は“足す”より“整理して一本化”のほうが回るケースが多いです。
現実あるある:外来の勝ち筋は「事務が回る設計」
医師が頑張っても、算定漏れが多いと金額になりません。逆に、要件を満たさず算定すると返戻・査定や指摘の火種になります。だから外来は、受付・医療事務・看護の動きまで含めた“設計勝負”です。
- 判断の目安
- 外来は小さな点数差が件数で積み上がる。
- 管理料・連携・DX・適正化は「運用が回るか」が成否を分ける。
- 加算を増やすより、算定漏れを減らすほうが効く施設も多い。
3. 入院の影響:入院基本料の見直しと“体制要件”が重くなる
入院は外来よりも点数単価が大きい分、要件変更の影響が大きく出ます。特に急性期は、看護配置だけでなく多職種協働、重症度や受入体制など、評価の軸が複合化しやすい。ここで詰みやすいのが「人が足りないのに要件が上がる」問題です。
実際どうする人が多いかというと、要件に合わせるために“役割の組み替え”をします。たとえば、病棟機能を明確にし、急性期に寄せる病棟と回復期・慢性期を支える病棟を分ける。あるいは地域連携・在宅復帰を強め、滞在日数と受入れの質を上げる。ここは病院ほど「経営戦略=診療報酬戦略」になります。
| 入院領域 | 影響ポイント | 現場の対応パターン |
|---|---|---|
| 急性期 | 入院基本料・評価の見直し、体制要件の複合化 | 多職種協働、受入体制の整備、病棟機能の再設計 |
| 回復期 | 在宅復帰・リハ・連携の評価の動き | 地域連携強化、退院支援の標準化 |
| 慢性期 | 医療・介護の接続、在宅のハブ機能の期待 | 在宅支援・軽症救急・介護連携を“役割”として明確化 |
- ここだけ覚えればOK
- 入院は要件変更の影響が大きい。点数以上に“体制”が問われる。
- 病棟機能の再設計(どこに強みを置くか)が現実的な対策になる。
- 人手不足の中で要件が上がるため、役割分担の見直しが重要。
4. 在宅の影響:評価強化と適正化が同時に来る(やる人ほどルールが増える)
在宅医療はニーズ増が見込まれる一方で、「適切な在宅」と「不適切の是正」を両立させる流れが続きます。つまり、在宅を伸ばす方向性はあるけれど、算定の目も厳しくなる。
ここでよくある誤解は「在宅をやれば点数が増えて儲かる」。在宅は24時間対応、緊急時対応、連携、移動時間、人件費が重く、むしろ体制を作らないと赤字になりやすいです。強い在宅チームは、点数より先に“運用”ができています。夜間対応の当番、訪問看護との連携、書類のテンプレ化、情報共有のルール。そういう地味な部分が利益を作ります。
現実寄りの補足:在宅の敵は「属人化」
先生が一人で抱える在宅は、最初は回っても、件数が増えた瞬間に崩れます。2026改定の影響をプラスにするなら、属人化を減らし、チーム運用に寄せるのが最短です。
- 判断の目安
- 在宅は評価強化の流れがある一方、適正化でルールも増えやすい。
- 体制(連携・夜間・書類)がないと、点数が増えても回らない。
- 属人化を減らすほど、改定の影響を受け止めやすい。
5. 医療DX・適正化の影響:点数より「やり方」が変わる(そして現場が疲れる)
診療報酬改定は、医療の方向づけでもあります。医療DX、ICT連携、電子的なチェック(重複投薬など)の活用、長期処方・リフィルの推進、残薬対策…。このあたりは“正しい方向”に見えますが、現場視点では「また作業が増える…」となりやすい。
ここでの勝ち筋は、真面目に全部やるより、一度ルールを決めて、迷う時間を減らすことです。例えば、長期処方やリフィルは、対象患者の基準と説明文をテンプレ化しておく。重複投薬チェックは、薬局やかかりつけ機能と連携し、院内だけで抱えない。DXは“導入”がゴールではなく“運用”がゴールです。
| テーマ | 影響 | 詰みやすい点 | 現実的な対策 |
|---|---|---|---|
| 医療DX | 評価・要件の増加、運用の標準化が必要 | 導入したのに使われない | 院内ルールと担当を決め、定着を優先 |
| 適正化(処方など) | チェック強化、説明責任が増える | 現場が“説明疲れ”で荒れる | 対象基準と説明テンプレの整備 |
| 連携 | 外来・在宅・薬局との接続が重要に | 連携の窓口が不明で止まる | 連携先と連絡フローを固定 |
- ここだけ覚えればOK
- 2026改定は賃上げ・物価対応の色が濃いが、適正化も同時に進む。
- 差がつくのは点数表の暗記より、院内の運用を変えられるか。
- DX・適正化は“導入”ではなく“定着”がゴール。テンプレとフローが効く。

