国家安全保障戦略の政権による変更点と目的・日本の立場をやさしく解説
日本の「国家安全保障戦略」は、安全保障政策の最上位に位置づけられる基本文書であり、政権交代や安全保障環境の変化に合わせて見直しが行われてきました。特に2013年(第2次安倍政権)と2022年(岸田政権)の2つの戦略は、日本の防衛政策の方向性を大きく転換させたと言われます。ここでは2025-12-08時点で公表されている情報をもとに、政権ごとの変更点や目的、日本が国際社会でどのような立場を取ろうとしているのかを分かりやすく整理します。
国家安全保障戦略とは何か
外交・防衛を含む安全保障政策の「最上位文書」
国家安全保障戦略(NSS)は、日本の外交・防衛政策を中心とする安全保障政策の基本方針を示した文書で、概ね10年程度の中長期的な視野で作成されます。2013年に初めて策定され、従来の防衛大綱や中期防などを上位から方向づける役割を持ちます。
| 項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 正式名称 | 国家安全保障戦略(National Security Strategy) | 略称はNSS。外交・防衛の基本方針を示す。 |
| 初策定 | 2013年12月(第2次安倍政権) | 日本として初めての包括的な安全保障戦略文書。 |
| 改定 | 2022年12月(岸田政権) | いわゆる「安保3文書」の一つとして新たなNSSを策定。 |
| 役割 | 安全保障政策全体の方向性を示す | 防衛大綱や中期防など、下位の計画文書の基礎となる。 |
- 国家安全保障戦略は、日本の安全保障政策の「羅針盤」のような役割を持つ文書です。
- 大きな国際環境の変化があると、政権の判断で改定が行われます。
- 2013年版と2022年版の比較を通じて、政権ごとの「安全保障観」の違いが見えてきます。
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「積極的平和主義」から「反撃能力・防衛力の抜本的強化」へ
2013年の国家安全保障戦略は、「国際協調主義に基づく積極的平和主義」を掲げ、日本が国際社会の平和と安定に積極的に貢献する姿勢を打ち出しました。一方、2022年の新戦略では、中国を「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置づけ、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や防衛費の大幅増額など、防衛力の抜本的強化が前面に出ています。
| 項目 | 2013年版(安倍政権) | 2022年版(岸田政権) |
|---|---|---|
| 全体理念 | 「国際協調主義に基づく積極的平和主義」 | 「自由で開かれた国際秩序」の維持と、抑止力・対処力の抜本的強化。 |
| 脅威認識 | 北朝鮮のミサイル・核、中国の台頭などを「安全保障環境の厳しさ」として記述。 | 中国を「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置づけるなど、より強い表現。 |
| 防衛力整備 | 「統合機動防衛力」の構築を掲げ、防衛大綱・中期防に反映。 | 「統合防衛力」の構築、反撃能力の保有、防衛費をGDP比2%程度に引き上げる方針。 |
| 新領域 | 宇宙・サイバー・電磁波領域への対応の重要性に言及。 | 宇宙・サイバー・電磁波に加え、経済安全保障や技術覇権競争にも重点を置く。 |
- 2013年版は、平和国家としての歩みと国際協調を強調しつつ、安全保障環境の悪化に対応する姿勢を示しました。
- 2022年版は、より具体的に「反撃能力」「防衛費増額」「経済安全保障」などを打ち出し、防衛力強化色が濃くなっています。
- いずれも日米同盟を軸としますが、2022年版ではインド太平洋地域での連携や多国間協力の比重が一層高まっています。
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「国民の安全」「国際秩序の維持」「経済・技術の安全保障」を総合的に追求
国家安全保障戦略の根本的な目的は、日本の独立・国民の生命と財産・領土・領海・領空を守ることです。そのうえで、2013年版では「国際協調主義に基づく積極的平和主義」として、国連PKOや開発支援などを通じて国際社会の平和に貢献する姿勢が強調されました。2022年版では、ミサイル・サイバー攻撃・経済的威圧などのリスクが高まる中で、抑止力と対処力の強化、経済安全保障の確保がより前面に出ています。
| 目的の柱 | 具体的な内容 | 日本の立場 |
|---|---|---|
| 国民の安全・国土の防衛 | 領土・領海・領空の保全、ミサイル防衛、島嶼防衛など。 | 専守防衛の基本は維持しつつ、反撃能力の保有などで抑止力を強化。 |
| 国際秩序の維持 | 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持。 | 日米同盟を軸に、欧州・豪州・インドなどとの連携も重視。 |
| 経済安全保障・技術 | 重要インフラや半導体などの供給網の強靱化、先端技術の保護・育成。 | 安全保障と経済政策を一体として捉え、「戦略的自律性」と「開かれた経済」を両立させる方針。 |
| 防衛費の水準 | おおむね5年程度で防衛関係費をGDP比2%程度まで増額する方針。 | 同盟国やパートナー国と比較しても、より積極的な防衛力整備を進める姿勢を示している。 |
- 日本の立場は、「平和国家」であり続けながらも、厳しさを増す安全保障環境に現実的に対応するというバランスを模索するものです。
- 防衛費増額や反撃能力保有は国内外で議論を呼びつつも、抑止力強化を通じて戦争を防ぐという論理が前面に出ています。
- 同時に、経済や技術の分野でも安全保障を意識した政策が求められる時代に移行しているといえます。
政権交代と今後の見直しの可能性
安全保障戦略は「一度決めたら終わり」ではなく、環境に応じて更新される
国家安全保障戦略はおおむね10年程度を見通した文書ですが、実際には安全保障環境の変化や政権交代に応じて見直される可能性があります。2013年版から2022年版への改定も、北朝鮮の核・ミサイル能力向上、中国の軍事力増強、ロシアによるウクライナ侵攻などを背景に行われました。今後も、新たな脅威や技術革新が起これば、次の政権が戦略の更新を検討することになると考えられます。
- 国家安全保障戦略は「固定された教科書」ではなく、環境変化に応じて書き換えられる「生きた文書」です。
- 政権が変われば、脅威認識の強弱や優先順位、表現のニュアンスなどが変化する可能性があります。
- ただし、日米同盟を基軸とする大枠の路線は、政権が変わっても大きくは維持されてきたという点も重要です。

